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ロケットの打ち上げに潜むリスク。部品ひとつの凍結で大惨事に

2024年に入り、日本の宇宙開発はめざましい勢いを見せています。月面探査機SLIMの月表面着地、H3Aロケットの再打ち上げ成功、失敗に終わりましたが民間ロケット「イカロス」初号機の打ち上げは、日本の高度な宇宙技術を知るよい機会となりました。

ところで、人工衛星や探査機、そして人を宇宙へ送り届けるにはロケットが必要です。ロケットの打ち上げは些細な不具合があっただけでも大爆発を起こすといった惨事を招きます。その要因のひとつとして、ロケット部品の凍結であったことをご存じでしょうか。

ロケットの打ち上げと凍結にはどんな因果関係があるのか、過去の惨事を元にお話しします。

衝撃的だったスペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故

1986年1月28日、アメリカのスペースシャトル「チャレンジャー」は、打ち上げてから1分過ぎにブースターロケットが突然爆発し、乗員7名全員が犠牲となりました。乗員の中には、民間の女性教師が含まれていました。宇宙での授業に生徒たちは期待を膨らませ、打ち上げの成功を現地やテレビ中継で見守っていました。当時の爆発事故の映像がNHKのサイトで見られます。

チャレンジャー爆発 (NHK)

この爆発事故を受けて、スペースシャトル計画は2年8か月もの間、中断することとなりました。

原因のひとつとされているのがOリングの凍結による破損

その後の事故調査から、爆発事故を起こした原因のひとつは、ブースターロケット(シャトルを宇宙へ送り上げるのに使われるロケット)の燃料部に取り付けられていたOリングという部品の破損だったことがわかりました。そして、この破損を引き起こしたのが凍結だったのです。

Oリングは、部品と部品の接合部に生じる隙間を密閉するのに使われるリング状の部品です。食品加工機器、薬剤合成機械、半導体製造装置など、あらゆる産業用機械に用いられています。ゴムでできていて、部品のつなぎ目にはさみます。すると、ゴムの弾力により密閉作用が働きます。難点は気温の変化で、凍結するとゴムが硬くなり弾力が弱まります。すると、Oリングの役割である密閉がうまくできなるおそれがあります。

rocket_launch_2.jpg

Oリングの例

チャレンジャー打ち上げ当日の朝は気温が低く、氷点下近くになったといいます。そのため、Oリングが凍結して硬くなり、燃料部の密閉ができなくなってしまったのです。そして、打ち上げ中に硬化したOリングが破損して燃料漏れを起こし、燃焼ガスに引火して爆発を引き起こしました。爆発時の映像でシャトルが空中分解する寸前に、ブースターロケットの横から炎が出たのは、Oリング破損による燃料と燃焼ガスが引火したのを裏付けています。

Oリングによる密閉は何重にも施されています。しかし、凍結が起きればすべてのOリングが機能しなくなり、爆発事故を招いてしまったのです。

冬に見られる凍結は宇宙開発では大きなリスク

ロケットの打ち上げでは、小さな部品の破損だけで大きな惨事を招くのだということをひしひしと思い知らされました。宇宙空間は極限の世界、些細なミスや不具合があっただけで、プロジェクトに携わったすべての人の努力が報われぬ結末に至るのは心が痛みます。凍結対策の製品を扱う弊社にとって、原因が凍結にあったと聞くとなおさらです。

冬場に水道管が破裂するのとは比べものにならないほど、宇宙開発において凍結は大きなリスクをもたらします。技術者の苦労は計り知れません。

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