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先端技術の実験に必要な真空の世界。実はヒーターが活躍してるんです

最先端のエレクトロニクス製品の研究や技術開発をするには、大気中より極めて気体が少ない真空の世界を作る必要があります。実は、実験装置の中で真空を作るのにヒーターが活躍しているのです。真空作りにヒーターはどんな役割を果たしているのでしょうか。

先端技術の研究には真空が不可欠

私たちが日頃使っているパソコンやスマートフォンといった情報機器はもとより、テレビや洗濯機などの最新の電化製品には、メモリーや画像センサー、あるいは太陽電池といった半導体を使った電子部品がたくさん使われています。こうした電子部品の研究をしたり、工場で生産したりするときは、特殊な機械を駆使して真空の環境を作らなければならないのです。なぜ、真空にしなければならないのでしょうか。

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半導体やレアメタルなどの電子材料を組み合わせて高性能の電子部品を作るには、構成している原子や分子のもつ性質を最大限に引き出す必要があります。そのためには、製造や合成の過程中に他の物質が混入してしまうと期待通りの性能が出せず、よい部品が作れません。そこで、酸素や窒素など空気中に含まれる不要な分子や、気体状で浮遊している不純物が極力存在しない真空の空間を作り、その中で実験や製造をしなければならないのです。それも、食べ物を長期保存するのに使われる真空パックよりもはるかに高い真空度が求められます。

高真空を作るには時間がかかる

電子部品の実験をするための高真空作りは段階的に行います。まず低真空用ポンプという掃除機のような機械を使って、大気から1000分の1程度の真空を作ります、この真空度は、地球の大気圏よりやや遠い宇宙空間と同じくらいと言われています。

低真空用のポンプではこれ以上の真空は作れません。次に、特殊な真空ポンプを動かして、さらに100万分の1以下の高真空を作ります。ちなみに、これだけ極限の真空にしても、数え切れない量の気体分子が残っています。

高真空を作るには長い時間がかかります。大気から排気を始めた場合、一日から数日もかかってしまうのです。そのため、少しでも時間を短縮して目標の真空度にする工夫が必要となります。

ヒーターであたためると短時間で高真空に

できるだけ時間を短縮して真空を作るのに用いられているのが、金属製の真空容器(チャンバーといいます)をあたたる方法です。

真空容器の内側表面には、気体分子やメンテナンスの際に手についていた油脂が付着しています。これらは表面からなかなか離れず、じわじわと放出し続けるため、短時間で高真空を作る妨げになっています。そこで、真空容器の外側にヒーターを巻き付けて、真空容器全体を温めます。すると、真空容器の内側も温められて、内側表面に付着している気体分子や油脂がヒーターの熱で活性化して大量に離れ出し、高真空ポンプで効率的に排気できるようになります。そして、実験開始前にヒーターの加熱を止めて真空容器を冷ますと熱による活性化が収まるため、内部表面に付着していた気体分子や油脂の放出量も減り、容器内を高真空の状態にできるのです。

真空容器をあたためるときに使われるのが、巻き付けが容易な帯状のヒーターです。たとえば、シリコンベルトヒーターや、ガラスクロス製のリボンヒーター(テープヒーター)です。クリーンルームで使用するときは、プリテトラオロエチレン(PTFE)で加工したリボンヒーターもあります。

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シリコンベルトヒーター

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リボンヒーター(テープヒーター)

取り付けるときは、ヒーターを巻き付けた後にアルミホイルで真空容器を覆い、全体に熱が伝わりやすくするようにします。

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巻き付けが難しい真空装置用ヒーターもお任せ

実験用の高真空装置の場合、真空容器の側面にさまざまな付加装置を取り付けることがあります。すると、規格品のヒーターでは幅があわないなどの理由で巻き付けが難しく、ヒーターなしで高真空を作らざるを得ないことがあります。このようなときは弊社へぜひご相談ください。

弊社のヒーターは手作りで製作しています。そのため、どんな長さや幅のヒーターでも要望に応えることができます。注文も1本からお引き受けいたします。オーダーメイドのヒーターが作れるのは弊社の強みです。

先端技術の研究開発に不可欠な真空、ヒータ−は地味ながら真空作りに大きな役割を果たしています。未来の情報機器や新製品を世に送り出そうと、今日も研究室や工場でヒーターは真空機器を温めています。

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