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ギターの修理に強い味方。シリコンラバーヒーターを使ったネックアイロン

ギターの修理やメンテナンスにヒーターが使われていることをご存じでしょうか。

ギターは定期的にメンテナンスをしなければなりません。修理を手がけるプロの職人によると、状態次第では分解作業が必要なときもあり、そのときは効率的に作業のできる器具があると大きな手助けになるといいます。その手助けとなるのが、ネックアイロンと呼ばれる加熱器具です。

弊社にも、アコースティックギターの修理に使用できるヒーターの問い合わせや注文がよく寄せられます。そこで、ギターの修理やメンテナンスに有用なネックアイロン(ネックヒーター)について紹介します。

ギターは経年変化で生じる反りの修復が必要

ギターについて詳しくない人も、このブログを読んでいることと思います。まずは、ギターの各部名称とメンテナンスの必要性について簡単に説明します。

ギターは、指先で弦を爪弾いて(つまびいて)音を奏でる弦楽器です。代表的なものがアコースティックギター(通称、アコギ)です。アコースティックギターと聞くと想像がつかないかもしれませんが、誰しも目にしたことのある典型的なギターがそれです。

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ここではアコースティックギターを以後、単にギターと呼ぶことにします。

ギターは、ボディ、ネック、ヘッドの3つの部分(ヘッドもネックの一部と扱う場合もあります)で構成されています。

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参考」:ギターのパーツ各部名称 (超初心者のためのギータ入門講座)

ギターはほとんどの部分が木材でできています。木材は年月が経つと、湿気などにより水分を含んでいきます。すると、ギター本体に変形や歪みを生じます。

こうした歪みはギターのネックの部分で起こります。歪みが顕著になると、弦を張った面に対して垂直に上弧状または下弧状に反ってしまうのです。この反りを「ネック反り」といいます。ネック反りは、保管のしかたやギターの取り扱いかた次第によっても生じます。

参考:図解でわかる!~ネック反り編~ (島村楽器のリペア)

ネックは、弦を一定に張っておくのに不可欠な部分です。ネック反りが生じると、弦の張りが変化して正しい音律が出なくなったり、そのギター独特の音色が出せなくなったりします。さらに、ネックは持ち手の役割もしているため、ギターが弾きにくくなったり、悪い弾き癖を作る原因にもなります。

ギター本体を長持ちさせ、よい音を保つためには定期的なメンテナンスは欠かせません。ネットオークションなどで入手したばかりのヴィンテージ品であればなおのことです。

ネックの反りを補修するのに使われるネックアイロン

ギターのメンテナンスは素人には難しい作業もあるため、専門の業者や、工房を営んでいるプロの職人に依頼するのが確実です。メンテナンスはプロの職人でも手間のかかるときがあります。とりわけネック反りを補修するには時間と労力を要するといいます。

ネック反りを直すには、弦の張りを調整したり、ネック本体に組み込まれているトラスロッドと呼ばれる棒を動かして調整したりします。場合によっては、歪みのある部分を削って平坦にすることもあります。

参考:ネックの反りを確認〜調整してみよう:YG TUNE-UP FACTORY 第4回 メンテナンス編(YOUNG GUITAR)

しかしながら、ギターの状態によっては、反りが思うように矯正できないことがしばしばあるそうです。そのときは、ネックを分解してから補修しなければなりません。このネックの分解と反りの補修をするのにヒーターを組み込んだ器具が用いられています。ネックアイロン、またはネックヒーターと呼ばれる加熱器具です。

ネックアイロンはギターの補修で2つの役割を担います。ひとつめはネックを構成している木材を剥がすための加熱です。ネック表面には、指板(しばん)と呼ばれる部品がニカワなどの接着剤で取り付けられています。反りのある部品の補修をするには指板をていねいに剥がさなくてはなりません。そのためにはネックを加熱して接着剤のついている部分をあたためておくと剥がしやすくなります。

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ふたつめは、木材に含まれている水分を加熱蒸発させて、平坦にすることです。ヒーターで乾燥させることにより水分を取り除き、矯正して反りをなくすようにします。

ネックアイロンの仕組みは複雑ではありません。ネックと同じ長さと幅のアルミ角材を用意して、中にシリコンラバーヒーターを入れたものです。

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反りを直すには、ネックの上にネックアイロンを載せ、クランプで固定して反りを平坦にするよう矯正力をかけます。あとは、時間をかけてじっくり乾燥させながら、水分を取り除いていきます。

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弊社シリコンラバーを使ったネックアイロンでネック反りの補修をしている職人さんによると、以前は衣類のしわをとるのに使う家庭用の電気アイロンを使って作業をしていたそうです。電気アイロンは加熱面積が小さく、一様に熱をかけることができませんでした。ネックアイロンを使うようになってからは、ネック全体に直接密着させて熱をむらなく与えられると言っていました。おかげで、接着剤を剥がすのが楽になっただけでなく、反りの矯正もしやすくなり、作業時間を短縮できたとのことです。

シリコンラバーヒーターを活用したネックアイロンの使用には、温度調節のできる温度コントローラーが必要です。加熱温度を調節できないと、ギターに塗装してあるラッカーを焦がしたり、何より木材を傷めてしまうおそれがあるからです。顧客から預かったギターの補修にネックアイロンを使用する際は、必ず温度コントローラーとのセットで用いることを強くすすめます。

これまでの実績をもとによい音を長く奏でられる仕事に貢献したい

ネック反りは、エレキギターやベースギターといった各種ギターでも生じます。そして、バイオリンやチェロといった他の弦楽器でも同様です。

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今回紹介した弊社シリコンラバーヒーターを用いたネックアイロンは何年も前から受注があり、ブログにも取りあげられています。

自作ネックヒーター(ネックアイロン)について(ネックの元起き、反り修正用器具)

ありがたいことに、現在も新規の注文を受けています。

よい音を奏でる楽器の維持に貢献できるのは、弊社にとって大変意義深い仕事であると自負しています。これまでの受注実績をもとに、さまざまな弦楽器に適したネックアイロン用シリコンラバーヒーターの製作と、温度コントローラーなど関連機器をセットにした製品の提案と販売をしていきたいと考えております。ギターをはじめとするさまざまな弦楽器の修理に携わっている方で、シリコンラバーヒーターを使ったネックアイロンに興味がありましたら、ぜひ弊社まで何なりとご相談ください。

※ 弊社はヒーターの製作と販売のみを手がけています。楽器の修理は承っておりません。あらかじめご了承ください。

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