- ヒーターの知識
実験!ヒーター加熱でシリコンスポンジを使うと電気代はいくら節約できるか
2023年03月28日
勝又 月浪
はじめまして。スリーハイの勝又と申します。このブログでは、東京ビックサイトで開催の展示会「スマートファクトリー Japan」に関する記事で、弊社の商品を紹介するモデル役として何度か登場していました。
さて、前回のブログで電気代を節約するための方法として、保温カバーやシリコンスポンジが役立つことを取りあげました。
実は、ヒーターに保温カバーやシリコンスポンジを被せて加熱すると電気代が節約できるという話は取引先から聞いたものなのです。実際はどのくらい節約できるのか、弊社では把握していませんでした。
断熱材を用いた電気代節約は社内でも関心が高く、実験で検証してみようという話になりました。そして、私が実験で確かめることを任されました。結果は、断熱材を使うと本当に電気代を節約できることがわかりました。
私が取り組んだ実験の一部始終を紹介します。
配管にヒーターを取り付けての加熱を想定し、断熱材の有無で電気料金に差が出るかを検証
今回の実験は、産業機械用の配管を電気ヒーターであたためることを想定して。断熱材の有無で電気代がどのくらい節約できるか調べることを目的とします。
弊社には産業機械用の配管がないため、料理で使用する縦長の金属鍋を代用しました。代用の金属鍋はモリブデン製で、配管に用いられているアルミやステンレスとは材質が異なります。また、熱伝導率にも違いがあります。室温におけるモリブデンの熱伝導率は138 W/(m・K)で、アルミニウムの237 W/(m・K)とステンレス鋼(SUS 304)の16 W/(m・K)の中間ぐらいの値です。実際の配管加熱での電気代節約を比較検討する際は考慮に入れておいてください。
参考:機械技術ノート
8時間の加熱を行い、シリコンスポンジをつけたときとつけないときのヒーターの動作時間を測定
実験は、空の金属鍋にシリコンラバーヒーターを巻き付け、断熱材としてシリコンスポンジを取り付けた場合と、取り付けない場合の2つの条件で8時間ヒーターを動作させます。そして、ヒーターに通電した総時間、電気料金、消費電力を市販のエコチェッカーを使って測定します。実験時間として定めた8時間は、一日の操業時間を想定しています。
実験器具ならびに実験手順は次の通りです。
使用器具
- 金属鍋:モリブデン製、外径24センチ、高さ22センチ、蓋を閉めて使用
- ヒーター:シリコンラバーヒーター(弊社製、幅10センチ)
- 断熱材:キャタピラ型シリコンスポンジ、シート型シリコンスポンジ(いずれも弊社製、幅10センチ)
- 固定用テープ:ガラステープ
- 加熱・通電制御:シリコンラバーヒーターに備え付けのサーモスタットを使用。加熱温度が60度を超えると自動的に通電を遮断。
- 測定器:エコチェッカー(ヒーターへの通電時間、消費電力の測定に使用)
手順
- 空の金属鍋に蓋をして、側面にシリコンラバーヒーターを巻き付ける。断熱材を使用する場合は、キャタピラ型シリコンスボンジを被せて巻き、最後にガラステープで固定する。断熱材を使用しない場合は、シリコンラバーヒーターを巻きつけた後にガラステーブで固定する。
- 床下に熱が逃げないよう、金属鍋をシリコンスポンジシートの上に置く。
- シリコンラバーヒーターとエコチェッカーを繋ぎ、交流100ボルトの電源コンセントに接続して加熱を始める。なお、加熱温度が60度を越えるとシリコンラバーヒーターについているサーモスタットが自動的に通電をオフにして加熱が停止する。60度以下になると再び通電して加熱を始める。
- エコチェッカーが動作していることを確認し、実験開始時刻を記録する。
- この状熊を8時間続ける。
- 8時間後、エコチェッカーに記録されている積算電気使用時間を通電時間として記録する。あわせて、電気料金、消費電力、CO2排出量も記録する。
測定時間が8時間に及ぶため、実験は2日に分けて行いました。実験中の室内温度は1日目が23度、2日目が21度で、ほぼ同じ環境とみなします。
シリコンスポンジを使うとヒーターの動作時間が少なく電気使用量を軽減
シリコンスポンジを用いた場合と、用いない場合の二つの条件でシリコンラバーヒーターをそれぞれ8時間動作させ、エコチェッカーで測定した通電時間、電気料金、消費電力は次の通りです。電気料金は東京電力の料金体系に基づいています。
実験結果
実験測定の8時間のうち通電時間がどちらも2時間台となっています。これは、シリコンラバーヒーターの加熱時間が60度を超えたときにサーモスタットが加熱を停止させ、温度が下がったときに再加熱するまでは電気を使用していないためです。この動作が測定時間中に繰り返されたため、通電時間は8時間よりもずっと短くなっています。
注目したいのは、断熱材を用いたときのほうが用いない場合よりも通電時間が30分短くなっている点です。これは断熱材を用いることで保温効果が高まり、ヒーターの加熱が停止してから再加熱するまでの時間が短縮できたためと考えられます。つまり、断熱材を用いることで電気を使用する時間を減らすことができています。
総通電時間に対する電気料金は、断熱材を用いた場合は5円40銭、用いない場合は7円83銭でした。両者の差額は2円43銭で、断熱材を用いて加熱をすると、およそ3割の節約ができました。
1日の操業時間を実験時間と同じ8時間とし、冬場の操業日数を70日(週5日x14週)と仮定すると、冬の電気料金は170円10銭(2円43銭x70日)の節約が見込まれます。また、年間の操業日数を225日(週5日x45週)とした場合、1年の電気料金は546円75銭(2円43銭x225日)の節約になります。春から秋の間は冬よりも気温が高いため、ヒーターでの加熱に使用する電気も少なく済みます。そのため、電気代はもっと節約できるものと見込まれます。
参考までに、消費電力に対するCO2排出量も調べました。CO2排出量は、断熱材を使用したときは0.11キログラムで、使用しないときの0.16キログラムよりも0.05 キログラム(50グラム)少ない結果となりました。電気代の算出で仮定した年間操業日数225日を用いて、CO2排出量に年間に換算すると、11.25キログラム削減できたことになります。これは、東京駅からつくば市までを普通自動車で走行したときに排出される量に相当します。ただし、冬の消費電力量を基に換算しているため、実際の年間CO2排出量はもう少し少ないと考えられます。
断熱材を使ったヒーター加熱は電気代の節約に効果あり
今回の実験で、断熱材にシリコンスポンジを用いてヒーターで加熱をすると、断熱材を用いないときと比べて約3割ほど電気代を節約できることがわかりました。ヒーターの大きさや数により節約できる電気料金に差はあると考えられますが、生産現場でヒーターを使用する際は断熱材と併用することで電気代節約につながることを実証できました。
円安、物価高、光熱費の値上がりと、モノ作りの現場では弱り目に祟り目な状況が続いています。今回の実験結果が経費節約の参考になれば幸いです。
- 勝又 月浪
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